建築家の選択
■家は試着できない
住宅を建てると言うことは、誰にとっても、人生の中の一大事業の一つであることは間違いありません。現実的な話としては、昔言われたように何度も家を建て直し、住み替えをして、自分の満足のいく住まいを得ることは、殆どの人にとって困難であることは事実です。しかしながら、それだけ大変な事業の割には、家というものは自分が住むまでに、洋服や自動車のように自分で試してみることが殆ど難しいというものでもあります。

■選択することだけでは設計ではありません
ハウスメーカーの展示場でさえ、今建てようとしている家と全く同じ条件で建てられていると言うことは少ないはずです。確かにハウスメーカーのように、事前にある程度のところまで、カタログやモデルハウスで具体的に選ぶことが出来ると言うことは、素人の人にとっては馴染みやすい方法ではあります。ただし、その用意されているメニューには一般的なものはあっても、建て主のもつ固有な「こだわりに」こたえるものは少ないはずです。
当然、購入する建物の価格の中には、自分の住むことのない展示場の費用や、パンフレットそして広告や営業マンの費用も負担しなくてはなりません。そしてハウスメーカーの建物の設計プロセスの殆どは、選択という方法が主たる行為となるわけです。

■ゼロからのスタート
ここで、建築家と共に建てる家の場合を考えると、建築家はある意味でゼロからスタートして、建て主の希望を現実的な「もの」へと変えていきます。選択の範囲も工場生産品の住宅よりも、経済的、物理的な制約はあったとしてもかなり広い範囲となります。

■建築家を選択する
ここで、重要なのは、いかに建て主の方と建築家とが気持ち良くこの共同作業を行うことが出来るかと言うことです。インターネットのなかった時代には、ごく一部の雑誌をとおしてでしか、建築家を知ることが出来ませんでした。しかしながら、今では、こうしてインターネットをとおして、それぞれの建築家の個性や考え方を選択し、「こだわりのある」家を建てることが出来るわけです。

■見えにくい価値のあるもの
建築家のこだわりの一つとして、「空間」という言葉があります。全く漠然としていて、つかみ所が無いものですが、実は住んでから最も大事な建物の要素なのです。気持ちの良い場所とか、居心地の良い場所だと感じる時が、誰にでもあるはずです。住んでいて暑くない、寒くないだけでなく、居ることが気持ちの良いことであること、それが良い「空間」だと私は思います。

■疑似体験・・・バーチャルコンストラクション
先に述べましたように、建物は洋服のように試着できません。でも、最近は擬似的にそれを体験すること(バーチャルコンストラクション・・・仮想建設)が出来るようになってきました。10年と言うよりは、5年前でも難しかった手軽なコンピュータグラフィックスによる空間体験が比較的簡単に可能になってきました。コンピューターのハードウェアーとソフトウェアーの進歩とそれらの低価格化がそれを可能にしてくれはじめました。私の場合、設計の比較的初期段階からCGを使い設計をしています。実際に、自分の作った空間を画面の中で、歩き回りながら設計をするということをしており、スケッチだけで設計していた頃から比べると夢のような時代となってきました。当然、建て主の方もその恩恵を享受できるわけです。