私が独立した平成元年頃から、世の中にパソコンという便利なものが広がり始めました。元々独立する前から、積極的にコンピューターやワープロ等に接してきたため、かなり早いうちから、私の事務所もコンピューターを導入しました。そのころは、まだ「ウィンドウズ」ではなく、MS-DOSによる文字の打ち込みで操作を行う時代でした。当時は、パソコンを教えてもらえる場所も少なく、大抵は独学でコンピューターの知識を覚えたものでした。一つの疑問や失敗によるつまずきから数日間パソコンが使えなくなるようなことは良くありました。大抵は、ほんのわずかな知識や助言があれば、瞬時に解決することばかりでした。そうしたパソコンの独学の経験から、コンピューターの操作や知識を助けてもらえる何かがあればと言うことが、長い間私の中におぼろげながらずっとありました。このような背景を持った私が出会ったのが、山梨県の都留市で実現した「都留市情報未来館」の仕事でした。 全体の事業は、地域に光ケーブルネットワーク網(地域イントラネット)を構築する事業でしたが、その中心的な施設の一つとして、地域情報化支援施設「情報未来館」を提案させて頂きました。建物は、新築ではなく、古い文化会館の1フロアーの内部を丸ごと、構造体までに裸にした後に、内装、家具、空調設備、照明、情報設備を施工しました。「都留市情報未来館」では、コンピューターやそのソフトを無料で利用でき、さらにボランティアの方達が中心となって、住民相互が助け合ってコンピューターの知識や、操作を覚えています。さらに、事業で設備された高速ネットワークを利用できることから、インターネットも不自由なく利用しています。 インターネットで調べたところ、同様な施設が既にアメリカではComunityTechnologyCenter(CTC)という名称で、各地に建設されているようでした。具体的な内容は、まさに、一人の力ではどうにもならない「ITの操作、知識」と言ったいわゆる「情報リテラシー」を自治体の助けを借りて身につけられる施設です。国民のデジタルデバイドを防止するという主旨でクリントン政権の時から行われているようです。私が、この施設の設計で心がけたのは、いわゆるインテリジェントビル的な無機的な空間を極力排除し、「アットホーム」で自分のリビングルームにいるような空間を作り上げることでした。▲ページ上部へ |
施設全体の構成から、細部に至るまでを全て私の方で提案させて頂きました。何よりも、世の中に類似した施設は無い訳でして、頼れるのは自分が今まで経験してきた事だけでしたので、初めてITに触れる皆さんが、どの様な施設であれば気持ちよく、効率的に利用できるかをいろいろな角度から想定してでの設計を行いました。 ![]()
|